2020年05月07日つばき谷の小道
地域が抱える”生きづらさ”にどう向き合うか
岩田正美教授(日本女子大学)によれば、貧困とは、
生活資料(生活に利用される財・サービス)が欠乏している状態をいう。
すなわち生活困窮状態のことである。
ところが、フィールドワーク(現場調査)といって地域や居宅を回っても、目で見ただけでその人が貧困状態にあるかどうかは、必ずしも判断できない。
貧困や生活困窮というものは簡単には目に見えない。
だからこそ、何らかの尺度や基準を用いて把握することが必要となる。
「年越し派遣村」村長として貧困救済活動のリーダー役を務めていた
当時NPO法人もやい事務局長の湯浅誠氏(現NPO法人全国子ども食堂支援センター理事長)とともに、島根県西部の限界集落を尋ね一緒に高齢者宅を訪問した。
湯浅氏は独居老人や老人夫婦世帯で「何故、生活保護を申請しないのですか」と尋ねられた。
どの老人の答えも「まだ頑張れます」と、皆同じであった。
その高齢者の言葉が、私の心によみがえった。
本書は、島根に暮らす高齢者、障がい者、子ども、そして生活困窮者たちの抱える「生きづらさ」を一般市民の生活の視点から見つめなおしている。
第1部は研究者により山陰地域の“生きづらさ”を分析し、政策提言をおこなっている。
第2部では、現場で“生きづらさ”に対し専門職として格闘している人たちによる取組の報告である。
とりわけ現場の実践者の、「ともに悩む」「一緒に考える」「ともに歩む」「ともに生きる」姿勢の共通性は、ボランティア活動者だけでなく地域のすべての人に励ましを与える。
新型コロナ感染予防のなか「巣ごもり」生活の日々を通して、人との交わり、人間としての生活や働き方、家族の在り方、そして人としての生き方など大きな転換点に差し掛かっているといわれる。
新たに始まる地域共生社会に向けて、本書から多くのことが学べよう。
青少年育成島根県民会議 髙橋憲二
2020年5月6日