2018年10月04日つばき谷の小道
友情をはぐくむ時代
フランスの作家、サン=テグジュペリの作品、「星の王子さま」の中で、
王子さまがキツネと出会い、「おいで、ぼくと遊ぼう」と声をかけますが、
キツネは「なついていないから遊べない」と言います。
王子さまが「『なつく』って、どういうこと?」と尋ねると、
「それはね、『絆を結ぶ』ということだよ」と答えます。
キツネは
「きみはまだ、ぼくにとっては、ほかの十万の男の子となにも変わらない男の子だ。
だからぼくは、べつにきみがいなくてもいい。
……きみにとってもぼくは、ほかの十万のキツネとなんの変りもない。
でも、もしきみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になる。
きみはぼくにとって、世界でひとりだけの人になる。
ぼくも君にとって、世界で一匹だけのキツネになる」と答えます。
ここでの「なつく」は友情をはぐくむと言い換えることもできましょう。
友情をはぐくむということは、王子さまとキツネが互いに心の中でそう認識して、はじめて成立します。
キツネが王子さまに「いちばんたいせつなことは、目に見えない」とも言いますが、友情は、その目に見えない「いちばんたいせつなこと」つまり「信頼」とか「絆」によって初めて成り立つものといえましょう。
小学高学年から中学生時代は、自分自身に心があることと同じように、他人にも心があること、そして人には誰にでも心があり姿として見えないが、そうしようとすれば、その認識ができる時代です。
友情が芽生え、その関係に気づき、一生涯それが続くことを願う時代とも言えるでしょう。
大膳原に咲く吾亦紅
吾妻山を望む
(髙橋 憲二)